クリエイティブディレクターの仕事内容は?年収や必要なスキルも解説
広告業界のなかでも「クリエイティブディレクター」といえば花形の職種です。給与水準も高く、近年ますます人気が高まっています。今回は、クリエイティブディレクターについて、仕事内容や平均年収、求められる知識・スキルなどを解説していきます。クリエイティブディレクターを目指して転職活動をしている方は、本記事を通して理解を深め、キャリアアップにお役立てください。
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Contents
クリエイティブディレクターとは?
クリエイティブディレクターとは、広告制作の現場責任者のことで「広告ディレクター」とも呼ばれる職種です。主に広告代理店や広告制作会社、出版社などに在籍し、企画提案からスタッフ編成、進捗管理、制作指揮、予算管理など、広告が完成するまでの制作工程を統括します。制作する広告は、テレビCMやWeb広告、紙媒体やイベントの広告など多岐にわたります。
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クリエイティブディレクターの仕事内容
クリエイティブディレクターの仕事内容を3つピックアップしてお伝えします。
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クライアントとの打ち合わせ
クリエイティブディレクターの仕事は、基本的にクライアント(依頼主)ありきの仕事となります。広告を通した何かしらのPRがクライアントの目的となるため、商品やサービス、企業自体のPRなど、広告するモノの特徴やアピールポイントなどを明確にし、広告をおこなった結果としてどのような状態になって欲しいのか、といったことをヒアリングしていきます。クライアントが明確なゴールや広告方法を設定していない場合もあるため、クリエイティブディレクターはクライアントの考えはもちろん、潜在的な要望まで引き出し、広告効果を最大化するためのアイデアにつなげていく必要があります。
また、仕事獲得の経路としては、取引のある企業からの継続依頼や営業担当者が開拓した新規案件、コンペティション(略称は「コンペ」|複数企業による競合プレゼンテーション)、入札などがあります。
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広告戦略の立案
クライアントとの打ち合わせを通して広告の目的を明確にしたあとは、その目的を実現するためにどのような広告を作るのか、どのように広告を展開していくのかを決めていきます。広告の目的によって、テレビCMやYouTube広告、新聞広告、雑誌広告、Twitter広告、リスティング広告(Webブラウザの検索で表示される広告)、リターゲティング広告(自社サイトを訪れた人に向けた広告)など、適した方法が異なるため、広告媒体の選択も必要になる場合があります。
広告の企画や戦略がまとまったあとは、広告イメージや概要が記載された提案書を作成し、クライアントにプレゼンテーションをおこないます。また、この時点で起用予定のイラストレーターやアートディレクター、CMプランナーなどが決まっている場合は作例も準備します。
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プロジェクトのマネジメント
クライアントからプレゼンテーション内容の了承を得たら、広告作成に入っていきます。広告作成はプロジェクト単位で取り組んでいくため、クリエイティブディレクターは必要な人材を選ばなければなりません。広告内容にもよりますが、イラストレーターやアートディレクター以外にも、コピーライターやデザイナー、写真家などの選出、タレントが決まっていない場合はオーディションなどをおこない、全体を統括して広告を作成していきます。
プロジェクトが進行していくと、クリエイティブディレクターは品質や進捗状況の管理、問題発生時の対応などがメインの業務です。また、CMプランナーやアートディレクターがいる場合、それぞれの職務領域の管理は任せることが多くなっています。広告物としてのかたちが見えはじめてきたら、クライアントに適宜内容を確認していきます。修正依頼などがあれば対応をし、広告の完成に結びつけます。
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クリエイティブディレクターと周辺職種の違い
クリエイティブディレクターに近しい職種としては、アートディレクターや広告プロデューサー、広告プランナーなどが挙げられます。それぞれに明確な定義はありませんが、一般論としてどのような違いがあるのかをご説明します。
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クリエイティブディレクターとアートディレクターの違い
アートディレクターは、広告のビジュアル要素に関して責任を持つディレクターです。デザイナーやイラストレーター、カメラマンなどを指揮しながら、企画に基づいたビジュアルを仕上げていきます。一方、クリエイティブディレクターは広告制作全体に責任を持つディレクターです。クライアントの要望や課題を把握したうえで、デザインやコピーライティング、動画や写真などのクリエイティブ全般の制作指揮をおこないます。
アートディレクターが広告のビジュアル制作を統括する現場監督だとしたら、クリエイティブディレクターは広告制作全体を統括する現場監督であり、通常はアートディレクターの上位職に該当します。
また、一般的に大手広告代理店や規模の大きいプロジェクトにおいては、クリエイティブディレクターとアートディレクターが役割を分担して仕事を進めます。しかし、会社やプロジェクトの規模が小さい場合、クリエイティブディレクターを置かず、アートディレクターがクリエイティブディレクターの役割を兼務することが多くなっています。
- クリエイティブディレクターと広告プロデューサーの違い
広告プロデューサーは、クリエイティブディレクターのさらにうえに位置する職種です。クリエイティブディレクターが広告制作全体の現場監督だとしたら、広告プロデューサーはプロジェクト全体に責任を持つ総監督となり、クライアントとの折衝や予算配分・予算管理などの業務をおこないます。
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クリエイティブディレクターと広告プランナーの違い
クリエイティブディレクターは広告の制作指揮をおこないますが、広告プランナーはその前の段階で「どのような広告を作るのか」という企画を立案するポジションです。クライアントの要望やイメージを把握したうえで、ターゲットの心を動かす広告を企画します。
通常、広告プランナーはクリエイティブディレクターの部下にあたります。しかし、クリエイティブディレクターが企画を立案することもあれば、企画したプランナーが広告制作に携わることもあり、どちらかが両方を兼務するケースも少なくありません。
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クリエイティブディレクターの平均年収
DODAが2021年12月13日に公開した「平均年収ランキング(職種別の平均年収/生涯賃金)」によると、「クリエイティブディレクター/アートディレクター」の平均年収は475万円となっています。男女別、年代別の平均年収は以下のとおりです。
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クリエイティブディレクターの平均年収(男女別)
男性:510万円
女性:421万円
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クリエイティブディレクターの平均年収(年代別)
20代:370万円
30代:486万円
40代:641万円
50代~:682万円
※参考:【165の職種別】平均年収ランキング 最新版 |転職ならdoda(デューダ)
また、求人ボックス 給料ナビが2022年10月31日に更新した「クリエイティブディレクターの仕事の年収・時給・給料情報」によると、クリエイティブディレクター(正社員)の平均年収は524万円となっています。年収の幅は349〜925万円と広く、働く会社や経験・スキルによって差があることがわかり分かります。
※参考:クリエイティブディレクターの仕事の年収・時給・給料(求人統計データ)
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クリエイティブディレクターに必要なスキル
クリエイティブディレクターとして活躍するためには、一般的に以下のようなスキルが求められます。
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コミュニケーション能力
クリエイティブディレクターには、クライアントの意図やイメージを的確に汲み取れるコミュニケーション能力が求められます。また、広告プロデューサーや広告プランナーと連携を図り、デザイナーやコピーライターなどのクリエイティブスタッフを束ねていくうえでも、周囲と信頼関係を築くコミュニケーションスキルは必須です。
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スケジュール管理能力
クオリティの高い広告制作を目指すのは当然のことですが、だからといって納期が遅延してしまってはクリエイティブディレクターとして失格です。クリエイティブディレクターは常にすべての作業の進捗を把握し、問題があれば調整を図り、スケジュールどおりに仕事を進めていかなければいけません。
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マーケティング能力
クリエイティブディレクターは、最適なアウトプットで消費者の心をとらえる広告を制作しなければいけません。そのためには、時代の流れや業界の動向、トレンドや消費者のニーズを分析したうえで、どのような広告戦略、広告表現が適しているのかを判断するマーケティング能力が必須です。
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クリエイティブ能力
広告にはいくつものパターンがありますが、常にパターンに当てはめるだけでは効果を最大化できません。クリエイティブディレクターには、パターンにとらわれない発想力や、従来の常識を覆すようなクリエイティブ能力が求められます。ますます価値観が多様化する時代において、発想力・アイデア創出力に乏しいクリエイティブディレクターはクライアントの要望に応えられないでしょう。
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クリエイティブディレクターになるには?
クリエイティブディレクターはクリエイティブ系職種のなかでも上位職にあたるため、未経験から就職や転職ができるものではありません。そのため、デザイナーやコピーライター、動画クリエイターや広告プランナーとして広告制作の経験を重ね、クリエイティブディレクターにステップアップしていくことが通常の流れとなります。
まずはクリエイティブ系職種として、広告代理店や広告制作会社で働くことを目標に行動していきましょう。無事に就職や転職をしたあとは、日々の業務のなかで自分のコアスキルを磨き、一定のディレクション経験を積んだうえで、次のステップとしてクリエイティブディレクターというキャリアにチャレンジしてみてください。
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転職するならプログラミングの知識が武器になる!
近年の広告業界は、WebやSNSを活用したプロモーションが全盛になっており、クライアントから求められる広告物もWebサイトやアプリなどが増えています。このような時代の流れのなかで、プログラミングの知識を有するクリエイティブディレクターが重宝されるようになっています。
Webサービスやアプリケーション開発時に、実際にコードを書くのはエンジニアです。そのため、エンジニアに的確な指示を出すためにはプログラミングに関する基礎知識が必要になります。また、基礎知識がないと進行管理や品質管理がエンジニア任せになってしまい、実際の進捗状況などを見誤る可能性なども予想できます。今後、クリエイティブディレクターとして有利な転職をしたいのであれば、プログラミングに関する知識を身に付けることもおすすめです。
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クリエイティブディレクターになるために必要な資格
クリエイティブディレクターになるために資格は必要ありません。しかし、上述したようにクリエイティブディレクターはステップアップをしていった結果として就く職業となるため、まずはデザイナーなどとして就職や転職をする必要があります。そこでこの項では、クリエイティブ系職種の知識やスキルの証明になり、クリエイティブディレクターに必要な能力にも関係する資格をご紹介します。
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DTPエキスパート
DTPエキスパートとは、公益社団法人日本印刷技術協会(略称はJAGAT|ジャガット)が主催している認証試験です。DTPとはDesktop publishing(デスクトップパブリッシング)の略称で、パソコン上でイラストや写真、文章などの印刷物のデータを作成することです。DTPエキスパートでは、「DTP」「色」「印刷技術」「情報システム」「コミュニケーション」のカテゴリから問題が出され、3月と8月に試験が実施されます。試験勉強を通して、DTPに関連する知識や印刷物ができる流れについての理解が深まり、知識が増えることによるクリエイティブ能力やコミュニケーション能力の向上なども期待できます。
※参考:DTPエキスパート | JAGAT – 日本印刷技術協会
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Illustrator®クリエイター能力認定試験
Illustrator®クリエイター能力認定試験とは、一般社団法人サーティファイ情報処理能力認定委員会が主催をしている民間資格です。IllustratorはAdobe社が提供しているグラフィクデザインツールで、ポスターやロゴ、イラストの作成などが可能です。Illustrator®クリエイター能力認定試験に合格をすれば、Illustratorに必要な知識やスキルを有していることが証明できるため、デザイナーとしての就職や転職で評価される可能性があります。
※参考:Illustrator ® クリエイター能力認定試験の特長 – サーティファイ
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クリエイティブディレクターのキャリアパス
クリエイティブディレクターがキャリアアップを目指す場合、選択肢は「広告プロデューサー」か「独立・起業」のいずれかになるでしょう。
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広告プロデューサーに転身する
経験・実績を重ねたクリエイティブディレクターは、広告プロデューサーに転身するケースが目立ちます。広告プロデューサーは、各種広告媒体を取りまとめる総責任者です。制作現場から離れ、広告全体に関わるヒト・モノ・カネを管理します。
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独立・起業する
クリエイティブディレクターとして一定以上の実力を備えたら、フリーランスとして独立したり、自分の事務所を立ち上げたりする人も少なくありません。独立・起業することでそれまでの仕事に縛られず、幅広いクライアントの広告案件を手がけるチャンスが生まれます。実力次第で年収アップも見込めますし、今まで以上に大きなやりがいを持って仕事に取り組むことができるでしょう。
もちろん、独立や起業はリスクをともないます。決断には勇気がい要りますが、すでに既存のクライアントから指名でオファーをもらっていたり、自分の手腕で新しい仕事を獲得できていたりするのであれば、独立・起業によってキャリアアップを目指せる可能性は高いでしょう。
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まとめ
冒頭でも触れたとおり、クリエイティブディレクターは平均年収も高く人気のある職種です。それゆえに、転職活動を進めるうえでもライバルがたくさんいます。「他のクリエイティブディレクターと差別化できるポイントはどこなのか?」といった自己分析をしたうえで、候補となる企業の特色や求める人物像を把握し、自分がもっとも活躍できる職場を選んでいきましょう。