データサイエンティストの平均年収と必要なスキルとは?

データサイエンティストは、近年政府が重視している『数理・データサイエンス・AI』などを仕事内容に含み、ビッグデータや機械学習とも関わりの深い職業です。また、注目を集めている職業でもあるため、平均年収や、必要なスキルなどについても興味を持たれている方がいらっしゃると思います。
この記事では、それらの情報に加え、求人傾向などについても説明しています。ぜひともご確認ください。
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Contents
データサイエンティストの仕事内容とは?
データサイエンティストとは、データを収集・分析・解析し、企業のビジネスや研究などに役立つ情報を見つけ出し、課題解決や、意思決定の補助あるいはそれらをおこなう職業です。
この項では、データサイエンティストの仕事内容を3つピックアップしてお伝えします。
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データの分析
企業は、ビジネス活動を通して膨大なデータを保有していることがほとんどであり、それらのデータを分析し、ビジネスに役立てる潮流が生まれています。例えば、自社直販ECサイトでの滞在時間、バナークリック率、決済方法などのデータから、どのような人が継続購入をし、どのような人が一回の利用だけで終わってしまうかなどの傾向をつかむことができます。
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市場分析
勤めている企業や業態にもよりますが、データサイエンティストは、コンサルタントやマーケティングをおこなうこともあるため、市場分析も仕事内容のひとつとなります。市場分析とは、企業が属している業界の年間総取引額や成長率、競合情報、顧客の状況や潜在ニーズなどを調べることです。また、Web上の情報を集める際は、『スクレイピング』というデータの収集・抽出をするためにプログラムを開発する場合もあります。
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分析によって得たデータの活用方法の考案
データを分析して判明した情報は、企業ビジネスの意思決定や課題解決に利用されます。そのため、データサイエンティストは、クライアント企業や自社企業の業務特性やビジネスモデルなどについての深い理解が必要になります。データを分析するだけでなく、ビジネスに関する意見も求められることがあると覚えておきましょう。
また、データサイエンティストの業務内容や、スキルセットについて解説している記事がありますので、こちらもぜひご確認ください。
※関連記事:データサイエンティストとは?業務内容や必要なスキルセットを解説
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年収UPは見込める?データサイエンティストを募集している業種
2022年3月31日に、一般社団法人データサイエンティスト協会 調査・研究委員が発表した『データサイエンティストの採用に関するアンケート』では、日本国内の一般企業において、データサイエンティストを目標通り確保できなかった企業が62%にのぼると報告されました。
また、同資料ではデータの分析・解析業務を外部委託している企業が、多数あることも報告されています。
さらに同資料では、データサイエンティスト(DS)が在籍している企業でも、30%がデータ分析業務の一部を外部委託している。という実情も明るみになりました。
これらの情報から、データサイエンティストの需要に対して供給が追いついていないことがわかります。また、日経クロストレンドが2019年におこなった調査では、データサイエンティストの求人は右肩上がりとなっており、今後も人材の需要過多が続くのではないかと予想できます。
参考:マーケ系ミドルは平均年収753万円 データ系求人は7.5倍に
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データサイエンティストの人材は不足している
先述したデータサイエンティスト協会の資料や、日経クロストレンドの記事内容から、データサイエンティストが不足傾向にあることが予想されます。その理由としては、ビッグデータ解析や、機械学習モデル構築などの有用性が企業に認知され、広告代理店やITサービス企業のみならず、医療、金融、不動産、地方創生事業など、幅広い業界でデータサイエンティストのスキルが求められるケースが増えてきているからです。
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募集している業種と傾向
2021年4月7日に、データサイエンティスト協会 調査・研究委員会は、『データサイエンティストのリアル』という調査結果のなかで、データサイエンティストが従事している業種を発表しました。
※参考:データサイエンティストのリアル
こちらの調査では、IT・通信事業やコンサルティング、製造、金融、保険などの従事者が増加しており、それらの業種の企業が調査期間内に、データサイエンティストを募集・採用していったことが予想されます。また、農林業や運輸、宿泊、生活関連サービスなど、増加幅が狭い業種もありますが、増加をしていることに間違いはなく、上記資料からデータサイエンティストが求められる業種の広さを読み取ることができます。
また、弊社R-Stoneの求人内容では、英語×教育アプリ開発、社内向けBIツールの構築・運用、データ分析コンサルティング、美容情報サイト、証券会社などで数値リサーチを始めとした業務があり、IT・通信事業やコンサルティングに属する求人が多くなっています。
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データサイエンティストの平均年収
データサイエンティストの年収についての情報をお伝えします。
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データサイエンティストの平均年収は約637万円程度
厚生労働省が管轄している職業情報提供サイト(日本版O-NET)のjob tag(じょぶたぐ)は、職業ごとの情報を掲載しており、そこでのデータサイエンティストの平均年収は531.9万円となっています。
しかし、データサイエンティスト協会が、現役データサイエンティストを対象にした調査では791万円、後述するdoda(デューダ)や求人ボックスでの平均年収も異なっているため、情報提供元によってばらつきがあります。本記事では、それらの情報から平均を出し、約637万円程度とさせていただきました。(2022年10月現在)
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データサイエンティストの平均年収【doda】
転職支援や求人情報、アウトソーシングなどをおこなっているパーソルキャリア株式会社の転職情報サイトdodaは、2021年12月13日に平均年収ランキングを発表しました。そちらの情報では、データサイエンティストの平均年収は517万円となっています。
※参考:【165の職種別】平均年収ランキング 最新版 – DODA
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データサイエンティストの平均年収【求人ボックス】
価格.com、食べログ、映画.comなどを運営している株式会社カカクコムの求人検索サービスの求人ボックスでは、データサイエンティストの平均年収は約709万円、年収幅は345万円〜1,237万円となっています。(2022年10月現在)
※参考:データサイエンティストの仕事の年収・時給・給料(求人統計データ)
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類似職では収入が下がることもある
データサイエンティストは、データの収集・調整・分析に加え機械学習モデルの開発や企業へのビジネス提案など、データ分析関連の職業でも業務範囲が多岐に渡るため、データアナリストや機械学習エンジニアなどに比べて求人数が多く、収入も高くなる傾向があります。
実際に、弊社R-Stoneのデータサイエンティスト求人数は、全65件で平均年収は約765万円、年収幅は370万円〜2000万円に対し、データアナリスト求人数は、全18件、平均年収は約723万円、年収幅は350万円〜1800万円となっています。
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年収1,000万円を超えるデータサイエンティストも
弊社R-Stoneでは、データサイエンティスト求人で予定最高年収が1000万円を超えるものが全65件中に30件あり、企業の求めるスキルに合致していれば高収入を得やすい状態にあるといえます。具体的には、データ分析からシステム開発や、ビジネス提言までの一連の業務を一人称で実行できる知識やスキル、プロジェクトマネージャーなどの経験があると、好条件の企業に応募しやすくなるでしょう。
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年齢が高いデータサイエンティストほど年収が上がる傾向に
先述したdodaの情報によると、データサイエンティストの平均年収は20代が427万円、30代が560万円、40代が609万円と、年齢が上がるごとに上昇しています。また、株式会社ライボが運営する、就職や転職に特化した匿名相談サービスの『JobQ(ジョブキュー)』でも、20歳から60歳未満のデータサイエンティストの年収は、350万円から800万円までに段階的に増加しており、年齢が高くなるにつれて年収が上がる傾向が伺えます。
※参考:【165の職種別】平均年収ランキング 最新版 – DODA
【データサイエンティストの年収】大手企業の収入は高い?ランキングで紹介
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高収入を目指すならフリーランスも選択肢の一つ
IT業界では、同じような業務をおこなっている場合でも、会社員とフリーランスで収入が異なってくるケースが見受けられます。フリーランスは会社員と違って福利厚生などがなく、企業側も即戦力を欲しているので高い報酬額を提示する場合があるようです。そのため、データサイエンティストとして通用する知識やスキルを持っている方は、高収入を得るためにフリーランスに転身することも有力な選択肢の一つといえるでしょう。
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データサイエンティストが年収を上げるために必要なスキル
データサイエンティストが年収を上げるために必要なスキルを4つお伝えします。
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スキルアップも重要
データサイエンティストは、年齢とともに収入も上がりやすい傾向にありますが、必ずしもそのようになる保証はありません。また、データサイエンティスト業務で利用するライブラリやBIツールなども日々新しいものが出てきますので、情報をキャッチアップし、利用できるようになっていなければ対応できなくなることもあるでしょう。
データサイエンティストに限った話ではありませんが、日々の業務で自身の強みと弱みを知り、スキルアップの意識を持って取り組んでいく必要があります。
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統計学・機械学習の知識
データサイエンティスト協会は、データサイエンティストのスキルを定義する指標として、『スキルチェックリスト ver4.00』を公開しています。スキルチェックリストでは、スキルレベルによって4段階の区分があり、3段階目の組織全体の課題に対応、マネジメントすることができる棟梁レベルのスキルを持っている人材は少ないというデータがあります。
上記資料にある、『ビジネス力』、『データサイエンス力』、『データエンジニアリング力』のなかで、統計学や機械学習の知識は、『データサイエンス力』に該当します。これらの情報から、現役のデータサイエンティストであっても棟梁レベルに満たない方が多いと推察されますので、データサイエンティストとして就業することができても、勉強を続けていく姿勢が重要であるといえるでしょう。なお、統計学や機械学習の詳しい内容については下記参考のリンクからご確認ください。
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ITスキル
ITスキルは、スキルチェックリストでは、『データエンジニアリング力』に該当します。上述したように、棟梁レベルのスキルを持っていない方のほうが多いと推察されますので、継続的に学習をして能力を高める必要があります。データサイエンティストとしてITスキルを高めるためには、SQLのデータ整理やクラウド、オンプレミスでの環境構築、AIシステム運用などの知識が必要なため、『Pythonエンジニア認定データ分析試験』や『データベーススペシャリスト試験』、『AWS認定資格』などの関連する資格取得を目指すこともおすすめです。
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ビジネス的センス
ビジネス的センスとは、スキルチェックリストでは、『ビジネス力』に該当します。上述した画像資料では、3分野のなかで1番棟梁レベルが多くなっていますが、それでも2020年の調査では、全体の24%となっています。スキルチェックリストでは、2段階目から4段階目の項目のなかで、『課題の解決』、『データの構造化』といったワードが度々記載されており、データサイエンティスト業務において、重要なスキルであることが伺えます。
また、データサイエンティスト業務で重要なコンサルティングや、マーケティングの視点からの提案についての勉強もしていくとよいでしょう。
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データサイエンティストがをさらにスキルを磨くには
データサイエンスについて学べる教材や講座を紹介します。
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無償公開されている教材で学ぶ
数理・データサイエンス・AIを習得できるような教育体制の構築・普及を目指している『数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアム』では、東京大学が事業を実施している数理・情報教育研究センター(MIセンター)で無料教材を公開しています。リテラシーレベルから応用基礎レベルまでの教材が揃っていますので、まずはここからデータサイエンスの勉強を始めることもおすすめです。
※参考:大学間コンソーシアム – 数理・情報教育研究センター
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大学等で公開されている講義の受講
総務省統計局は、株式会社ドコモgacco(ガッコ)が提供している『gacco』という大学レベルの講座を無料で勉強できるサービス内で『社会人のためのデータサイエンス入門』、『社会人のデータサイエンス演習』という講座を開講しています。
ユーザー登録だけで無料で利用することができますが、2022年10月18日現在の情報では、『社会人のためのデータサイエンス入門』は2022年11月30日まで、『社会人のデータサイエンス演習』は2022年12月13日までとなっています。2023年には『誰でも使える統計オープンデータ』の開講予定があるものの、今後の予定は発表されていませんので、希望者はなるべく早めに受講をするようにしましょう。また、早稲田大学や京都大学などでは有償のデータサイエンス講座もありますので、気になった方はこちらもご確認ください。
京都大学データサイエンス講座 | 京都大学オープンアカデミー
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オンライン教材の活用
オンライン学習プラットフォームのUdemy(ユーデミー)では、『データサイエンティスト養成講座』を開講しています。Udemyでは講座ごとに購入し学習していく形になっているため、自分が興味のある内容や苦手な内容ごとに受講していくことが可能です。下記参考リンクから特設ページに訪問できますので、こちらもぜひご覧ください。
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データサイエンティストとしてのキャリア
データサイエンティストに転職するための方法を2つお伝えします。
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IT系職種から転職する
データサイエンティストはエンジニア領域の職務もおこなうため、IT系職種で働いている方は転職しやすいといえるでしょう。なかでも、データベースエンジニアやインフラエンジニアは共通している業務内容も多いため、足りない知識やスキルである『ビジネス力』や、『データサイエンス力』を身につけることで面接などで有利になることが予想されます。また、データサイエンティストの多くが利用する、PythonやR言語を利用した開発経験があると、評価されやすくなるでしょう。
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関連職種で経験を積んでから転職する方法も
データサイエンティストは、コンサルタントやマーケティング領域の職務をおこなうため、関連職種から転職するケースも見受けられます。コンサルタントやマーケティング職種から転職する場合は、『データエンジニアリング力』が不足すると考えられます。そのため、プログラミング学習時は参考書に加えて、『Progate(プロゲート)』や『paiza(パイザ)ラーニング』といったオンライン学習サービスや、各種講座などを利用して知識をつけていきましょう。
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データサイエンティストの平均年収と必要なスキルとは?の【まとめ】
データサイエンティストの平均年収約637万円は、国税庁が令和3年9月に公開した『令和2年分 民間給与実態統計調査』の平均給与433 万円を上回る結果となっています。加えて、年収1,000万円以上の求人も多く見受けられるため、収入面から見ても魅力的な職業の一つです。
しかしながら、データサイエンティストは必要になるスキルが多岐に渡るので、専門知識の幅が広い職業になっています。そのため、就業や転職をするまでに、ある程度の努力が必要になることは間違いありません。データサイエンティストを目指している方は、少しずつ知識やスキルを深めていくようにしましょう。
※参考:民間給与実態統計調査 – 国税庁