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マネーフォワード 取締役 CTO 浅野氏インタビュー

マネーフォワードが、いかにして技術という側面から世の中を変えようとしているのか。

取締役 CTO 浅野千尋氏

金融業界と聞くとどんな印象をお持ちだろうか。扱う情報がとてつもなくセンシティブである、ミッションクリティカルな業務、そのため、慎重になりがちな業界特性、おおよそこんなイメージではないだろうか。

一方で数年前よりFinTechをキーワードに、金融業界へITの側面からイノベーションが起きようとしている。そんな業界に向き合う株式会社マネーフォワード(Money Forward, Inc.)は金融/FinTech業界のリーディングカンパニーとして様々な活動をしている。

マネーフォワードという会社が、いかにして技術という側面から世の中を変えようとしているのかCTOである浅野氏にお話を伺った。

技術で世界を変える

技術で世界を変える - マネーフォワード 浅野氏

1つ目のテーマとしては「技術で世界を変えるマネーフォワード」という切り口で話を伺いたいのですが、具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか?

浅野氏:私たちは「お金に関わるプラットフォームを創り、すべての人や企業のお金の課題を解決したい」と考えております。それを実現するために当社で提供しているのが、「アカウントアグリゲーション技術」を使ったサービスです。具体的には、PFMサービスである「マネーフォワード」と、ビジネス向けクラウドサービス「MFクラウドシリーズ」を提供しています。

アカウントアグリゲーションの実現には業界を巻き込んでいく必要があると思うのですが、相当な労力を費やしているのではないでしょうか?

浅野氏:たしかにこの業界を動かしていくことは簡単ではないです。ですが、今年3月の住信SBIネット銀行のAPI解放を皮切りに、創業当初には10年以上かかると想定していた銀行API化の調整が、わずか数年で進捗するなど、銀行含めた業界関係者の感度も非常に高まってきています。本質的にユーザーにメリットがあるのであればポジティブな反応が多い印象があります。

これらの取り組みで業界が前進する一方、マネーフォワードという会社視点で見るとその優位性がなくなってしまうのでは?

浅野氏:API化するまではスクレイピングで情報収集していたためサイトに変更が発生するたびにメンテナンスが必要です。後続のFinTech企業が同じところで苦労してしまっては業界全体が活性されず、ユーザーの利便性が高まっていかない、それだけは避けたいという想いがあります。

なによりAPIはオープンであるべきですし、本質的にユーザーが求めているなら、優位性がなくなってしまうとしても、実現するべきだと思います。お金に関わるすべての課題を解決するというマネーフォワードのビジョン達成において、プラットフォーマーとして常に進化することで新たな優位性は磨かれていくものだと考えています。

専門性と網羅性

専門性と網羅性 - マネーフォワード 浅野氏

プラットフォーマーであると同時に、非常に高いレベルの専門性を保有していると見受けられます。マネーフォワードのビジネス向けクラウドサービスについては、会計士や税理士の方からも圧倒的な支持がある背景はいったい何でしょう?

浅野氏:「ユーザーである企業や個人事業主はもちろんのこと、プロである会計事務所様が使いやすいサービス」を目指して開発していることが理由として挙げられるのではないでしょうか。これまで慣れ親しんだ従来のソフトの機能に加え、単純作業を自動化することで、事務所内の業務効率化に貢献しています。また、普段から会計事務所様からのご意見に対して、迅速に誠実に対応していることも要因の1つであると考えています。

会社全体のことについてお伺いします。創業メンバーの皆さん金融出身者が多いことも一目置かれる要因でしょうか?

浅野氏:少なからずあると思います。特に情報セキュリティの観点ではセンシティブな情報を扱うことに対する業界全体の温度感は非常に高いのですが、マネーフォワードはこの領域に圧倒的な強みを持っています。

高い技術力と深い専門性があって初めて成り立つ難易度の高い業界ですね。そんな業界を牽引されているマネーフォワードですが、一方でプラットフォーマーとしての表情も持ち合わせていると思います。今後どのような展開を考えているか教えて頂けますか?

浅野氏:例えばですが、日本においても今後はクレジットスコア的な考えが広まる可能性があり、クレジットスコアを意識的に上げていくようなことが必要になると思います。デファクトスタンダードであるマネーフォワードがアカウントアグリゲーションを利活用して社会に還元できるサービスを展開していきたいです。

領域的にも家計簿だけ、会計や確定申告だけ、であればマネーフォワードである必要はないと考えており、「全ての人生設計に関わるプラットフォームを創ること」を目指しています。もちろんその完成形は自社だけではできない、各方面との連携が必要だと考えています。コアな部分はマネーフォワードがサービスを提供しつつ住宅ローンなど周辺部分は連携をすることでカバーしていけます。社会の課題を解決するためであれば、垣根を超えた手段を模索してベストを尽くしたいですね。

さらにその先の世界、何をしたいですか?

浅野氏:「お金の流れを変えたい」と考えています。

人生設計において、このぐらいの資産を築きたいといった理想に対してトータルでのプランニングや提案を自動でできる世界ってすごいと思いませんか。不動産や金融商品といったさまざまな手段が存在する中でその人のリスク許容度を考慮しながら、例えば検討している金融商品のリスクを提示するとともに複合的なプランが提案できる仕組み、挑戦したいですね。

原点に立ち戻るということ「コードを書くことをやめてわかったこと」

浅野さんでもキャリアに悩むことがあるのでしょうか?

浅野氏:もちろんあります。コードを書かなくなったときにしばらく自問自答が続きましたね。これまではなんだかんだで自分でもコードを書き続けてきたんですが、CTOとしての役割においてどうしても抽象度があがっていってしまい、書かないという選択をしたときは本当に悩みました。

それはコードを書くことが楽しいとか好きということへの反動でしょうか?

浅野氏:それもあるんですが、自分で書いているときはマーケットの反応を直に感じることができたという「感度」が冴えていたこと。またユーザーが求めていることを自分でサービスに反映させることができるため、変なバイアスがかかることなく本質を追求できていたことがあります。しかし、書かなくなった途端ユーザーに価値を届けられているのかどうか見えづらくなってしまったんです。

それでも書くことを辞めたのは原点を見つめなおしたことが影響していると思います。

重要なのはコーディングするとかしないとかではないと気付けたからですね。社会に対して変革を起こしたり、世の中を今より良くするという志において技術は手段でしかないと思いました。 マネーフォワードにジョインしたのも、理想に強く共感したからであって、アカウントアグリゲーションは1つの手段でしかないということです。

ひきかえに、マーケットへの感度や実装時の精度が落ちてしまうリスクについてはどのように向き合っているのでしょうか?

浅野氏:そうですね、例えば今は各方面でのアライアンス調整や座組を決める役割に多く時間を割いていますが、少しでも気を抜くとユーザーを置いてきぼりにしてしまう可能性があります。常にユーザーにとって意味があるのか、本当に貢献できる仕組みを作ろうとしているのかをブラさないように意志を持って取り組んでいます。

CTO浅野氏の原点

金融の世界に足を踏み入れたのは大学時代の「カブロボ・コンテスト」がきっかけだと聞いています。

浅野氏:金融もそうですが実はそれより少し前、高校時代に人工知能の分野に興味を持ち始めたことも影響していると思います。それから大学に入り、変動する株価に人工知能を活用したら面白そうだと考え、より専門的な研究室に所属することにしたんです。

その研究室時代に「カブロボ・コンテスト」の運営者として活動していました。

コンテスト参加者がアルゴリズムを実装するためのプラットフォームを創っていました。SDKを作って開発環境を提供したり、リアルなシミュレーション環境を実現するためのプラットフォームを作ったり技術的な支援を中心に活動していました。

「金融×IT」のプラットフォームを当時から作っていたということですね。それが企業から評価されて最初の会社を立ち上げられたと。マネーフォワードにジョインすることになったのはその後でしょうか?

浅野氏:その後もしばらくは金融業界で研究開発やコンサルティングをしていたのですが、ある時代表の辻から誘われたことがきっかけですね。mint.comを目のあたりにした辻がこの仕組みを実現できる人間を探した結果、出会うことになりました。どうにかアカウントアグリゲーションを実現したい、さらにその先の世界を変えたいというビジョンに強く共感しました。

その想いを今でも志として持っているので、「コードを書かない選択」があったのだろうと思います。

マネーフォワードでのキャリア

メディア各社からのマネーフォワード取材記事

キャリア観点ではどんな方が多いのでしょうか?

浅野氏:人によってキャリアパスがそれぞれありますが、短絡的に偉くなりたいとか社会的なステータスを求めるのではなく、自分の武器をどう活かしていくかを知っているメンバーが多いですね。

例えばですが、エンジニアとしてやっていた人間がすごく実力あったとしてもマネジメントできるかどうかは別の話ですよね。やはり、源泉となる志向と自分の持っている技術をどう活かしていきたいかを考えて実行する先にキャリアが創られていくものだと思っています。 内発的な動機付けを軸にスタートし外発的なところに落としていく、そんな順番で考えられるといいですね。

それが逆だと不幸になってしまうケースがありそうですね。エンジニアの方にとって内発的な動機付けにコミットできるような取り組みとして「Rubyコミッター」の採用があるかと思います。

浅野氏:OSS(Open-source software)への取り組みやRubyコミッターの採用など、技術に対する磨きこみができる環境があるので圧倒的に成長できるのは間違いないと思います。

技術顧問である松田明さんと一緒に働ける環境ってワクワクしますね。

働く環境

集中して仕事ができる「もくもくルーム」

社内の風土についてお伺いしたいのですが、風通しの良さと個人集中が絶妙なバランスですよね。

浅野氏:風通しの側面でいうと部門間での垣根が無いのは特徴ですね。エンジニアと広報が立ち話レベルでプレスリリースについてディスカッションしていたり、CSの席にエンジニアが出張するような制度を現場が積極的に創っていたりと、フラットにコミュニケーションができています。

横のフラットさだけではなく、上下についても一枚岩のイメージがあります。

浅野氏:意図的にそうしている部分はあります。意思決定1つとっても、経営側が自分達だけでこうあるべきという方向を決めることはせずに現場を巻き込んで決めていくということをしています。また、ボトムアップも歓迎しており例えば社内のルールは環境に応じて変わるべきで、それがユーザーのためであれば誰が言ったかではなく何を言ったかに向き合うように徹底しています。

経営だけではなく全員でマネーフォワードを創っているという自覚をもって取り組むことが自然とできることが大事だと思います。

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